TWAターミナル TWA at New York (1956-62) by エーロ・サーリネン (Eero Saarinen)
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この建物は、ケネディ空港のターミナルNo.5である。 遠くから見ると美しい。形がとてもチャーミングだ。 最初の印象は、白い屋根とガラスの深い色をした反射面の対比がとても良いという事であった。 ガラスの反射面が美しくなければ、 TWAターミナルは、白い屋根が面白い建物というだけで終わったかも知れない。 しかし、この反射面が全体に落ち着きと品格を与えている。 残念ながら全体写真を撮り忘れた。 でも全体は色々な本に載っていて有名だから、それで許して頂きたい。
屋根のコンクリートシェルは、一様ではない。 シェル間の切れ込みスリットは不規則に分散し、 中から見ると外形が全く想像できない。 シェル間の隙間はトップライトとすると共に、構造表現をダイナミックにしている。
「ニューヨーク摩天楼都市の建築を巡る」ではこの作品を表現主義的作品と言っていたが、 外を見た限りではすごくモダンな感じがして、私の持つ表現主義というイメージからはかなり外れていた。 確かに曲線を多用していて、写真で見たかぎりでは、形態が個人の内面の発露であるかの如くにも見える。 しかし実物を見ると、後期ライトの建築に見られるモダンな「有機的」曲線に近い感じがしたのだった。
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しかし中に入って印象は一変した。 屋根シェルの仕上げは外側は平滑だが、内部はわざとごつごつさせていて、 中と外で全然異なる印象を与えているのだ。 入った途端に何と言うか、いささかおどろおどろしい感じに見舞われたのだった。 私は表現主義映画の持つおどろおどろしさの世界を一瞬想像してしまった。 それを思うと、ちょっとこじつけだが、これを「表現主義的」と言っても納得できるような気がした。
内部の構成として、まず注意を引くのがホールの中に置かれた棟と、それをつなぐブリッジだ。 中央にブリッジがあるという事が、全体の構成をまとめるかなめになっている気がした。 このブリッジがなければ全体がうまく構成された感じが生まれなかったであろう。 また、スリットの付け根にちょっとした休憩場所が作られているのが気に入った。 まァ平面図を書いていてこういう場所が空いていれば、 建築の学生だって休憩場所にするだろう。 つまりたいへん自然に出来た空間のようだけれども、 斜めのガラス等のディテールが良くて大変いい感じである(写真7)。
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全体の印象としては、とにかくターミナルとしては小さい。 これで国際線に本当に使えるのだろうかと、他人事ながら心配してしまう。 実際、このターミナルには道路にはみ出した巨大な増築部分があり、 そこにカウンタ等の機能が入っている。 もともとの部分だけではやってゆけなかったという事だ。 増築された庇部分は1978年に別の建築家が作ったものである。
AIAのニューヨークガイドの中では、 この建物はすごく感覚に訴える建物であるような書きぶりだった (Romantic voluptuary: soaring, sinuous, sensuous, surreal..)。 確かに曲線というのは直角より「感覚に訴える」感じがするけれども、 しかしTWAターミナルの曲線は同時に構造の作りだす形態である。 私達は単に扇情的な「訴え」を見ているのではなく、 建物の支え/支えられ方を見ているのである。 最近アメリカではやりのF・ゲーリーの「曲線」より、 こっちの方がよっぽど建物としては「理にかなった」曲線だと思う。
[交通アクセス]
TWAターミナルは、ジョン・F・ケネディ空港(JFK)の第5ターミナル。 空港内はターミナル間接続バス(無料)が巡回しているのでそれを利用する。
[参考]
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