聖バーソロミュー教会 St.Bartholomew's Church (1916) by バートラム・G・グッドヒュー (Bertram G. Goodhue (1869-1924))
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まず目に入るのはビザンティン的なスクィンチ式ドームである。 ではビザンティンの特色であるギリシア十字式平面になっているかというと、そうではなく、 手前(西側)に向って大きなバシリカ的身廊が突き出している。 身廊の窓は丸アーチで、どうやらこの部分はロマネスク教会を意識している。 かと思うと袖廊には大きなバラ窓がある(ゴシック的)。
要するにこの教会の設計者は、 過去の教会という建築的表現の、断片を組みあわせる事により、 自由な新しい教会を作ろうとしたのだろう。 それはエコール・デ・ボザールが、 過去の様式の部分々々を組みあわせて新たな様式的な美を作りだす事を教えようとしたのと同じ態度だ。
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モダニズムの時代に入って過去のボザール様式には創造性がないと批判されたが、 様式という素材をどう組みあわせて新たな美を作るかという所に彼らは創造性を賭けようとしたのであって、 それはそれで一つの美学の世界だ。 それはこの教会の醸し出す雰囲気の中にも現れている。 決して派手ではないが、信仰の場という質実剛健にふさわしい渋めの表現がなかなか良い。 出隅のライムストーン(石灰石)がなかなかおしゃれだ。
ただ、知っている人にとっては 「古めかしく見えるけれど、本物の古い建物のどれにも当たらない新たに作られた建物」であり、 一種のキメラ的なのだ。 それでいいんだろうか・・これは一体何をやっている事になるのだろうか・・みたいな疑問が湧いて、 それがボザール路線が長く続かなかった(批判された)所以でもあるのだろう。
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もう一つこの教会の見どころは、 もとあったマッキム・ミード&ホワイト作の聖バーソロミュー教会(1903)の基壇部の装飾が 移築保存されている事だ。 教会の正面下の部分だ(写真5〜8)。 全体を見渡すと、この装飾というかタンパンが並んだような柱とアーチ、 彫刻の表現は、実に調和が取れていて美しいように思える。 一種の華麗さがあって、それがホワイトの面目と言えるのだろう。 ホワイトはマディソン・スクエア・ガーデン(現存せず)の設計者でもある。
しかし近目で見ると、どうも彫刻の人物の顔がいけすかない。 何かこう、ピンボケ写真から修復再生したみたいな細部なのだ。 ヨーロッパの古い建物の細部には、こういう所がもっと美しいものがある。 現場の石工がこうしちゃったのか、何とも分かりかねるが、惜しい気がする。 それと、そもそも、こういう宗教建築の重要部分にどうしてこんなに悲愴な表情の人が 並ばなければならないのか、私は宗教に詳しくないからそれも不思議ではあった。
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