正面の3連アーチと前に飛び出た双円柱の連なりで、 バロック的なドラマチックなスケール感を出しているのが リチャード・モリス・ハント(1828-1895)による中央部だ(1902竣工)。 ハントの遺作であろう。 この人はアメリカ人で初めてエコール・デ・ボザールに入学した人である。 折衷主義、直訳主義と言われている人だから、 このファサードも何か歴史作品からの参照で成り立っているのかもしれない。
入ってすぐのホールの天井アーチ(写真3)、中央階段(写真5)が豪華である。 そこから南へ入ったギリシア・ローマ美術棟(写真4)も、自然採光され天井が優雅である。 ちなみに翼部はマッキム・ミード&ホワイト作で1916年竣工であった(写真2)。 このような古典主義的な空間の部屋があるかと思えば、 サックラーウィングは1979のケヴィン・ローチ&ジョン・ディンケルー (Kevin Roche & John Dinkeloo)による増築である。 アメリカンウィング(1980)もローチ&ディンケルーによる(写真6)。
アメリカンウィングは、展示品があるかと思えば休憩ベンチもあって、 展示場所なのか休憩場所なのか分からない独特の空間となっている。 セントラルパークや空の景色をガラス越しに巧みに取入れ、訪れた人の疲労を癒してくれる。
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この美術館は、もともと1880年に移転して来たもので、当初の建物はゴシック風赤レンガで カルヴァート・ヴォークスの設計であった(この建物は西側に残る)。 その後増築に増築を重ね、きわめて複雑(複雑怪奇?)な構成となっている (例えば写真7には違う棟の接合部分が見えている)。 その為に色々な建築部分を通ることになり、景色が変わって気分の転換が出来る。 そのせいか回っていても意外と楽というか疲れないで済む。 1Fは展示物だけでなく中世ヨーロッパの部屋が再現されていたり、 彫刻などスケールの大きい展示物が多くてゆったり観賞でき、やはり疲れない。
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かと思うと、その反面「13-18世紀ヨーロッパ絵画」とか「19世紀ヨーロッパ絵画・彫刻」などの 最も多くの人が見に行く2Fの絵画のコレクションは、 順路もなければ休憩所もない碁盤のような部屋の連なりで、引きずり回されて疲れた。 この作りは美術館としては不適当であると思う。 古い作りの美術館にはときどきこういうのがある。 ルーブルの場合は、一応順路があって長々と部屋をひきずり回されてそれで疲れるのだが、 ここは廊下やちゃんとした休憩所がないだけでなく順路がない。 色々な方向に行けてしまうので位置感覚が得にくいという更なる難点を持っている。
結局のところ、ハントによる中央部のホール、大階段が空間としてよく出来ていて、 それが常にこの美術館の中心意識を呼び起こすシンボル的空間となっている。 何かあってもそこに返れば振り出しに戻れて、また新たな探索に向かえる。 中央ホールはかなり広いのだが、余りにも来る人が多くたむろしていて、 常に混んでいるのであった。 ちなみにAIAのNYガイドではこの中央ホール空間を、 ピラネージの描くネオローマンの空間をほうふつさせると書いている。
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