セントパトリック教会
St. Patrick's Cathedral (1858-1908)
by ジェイムズ・レンウィック (James Renwick)


19世紀から50年かけて建つ。着工当初この辺りには何もなかった
この大陸に立派なゴシック教会を建てたいという執念
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西正面から見ると、燃える炎のような双塔がいかにも印象的である。 調和正面(西正面)の双塔がすでにゴシック特有の上昇感をあおっている。 この幻想的とさえいえるファサードは、 ヨーロッパの何か既存の教会を模したと言うより、 設計者レンウィックの心の中に存在したゴシックの姿だったのではないだろうか。 竣工当時はゴシックリバイバルの盛期で、 1856にはウィーンのヴォティーフ教会が竣工している。 その計画された調和正面のそそり立つ尖塔の姿は、レンウィックにも伝わっていたのではないか。 調和正面の双塔は本来鐘楼なのだが、 セントパトリック教会では塔がそそり立つ上昇感に押されて、 鐘を撞くという機能が殆ど伺い知れない形となっている。

ゴシック教会、アメリカという異境の地に建つ正統派ゴシックリバイバル。 そう言えばそうなのだが、オリジナル(13-15世紀のフランスのゴシック教会など)とは何か違う。 ディテールの密度が本場と違う。 現場で見ると、何かこう、全体から受ける印象がもっと平面的と言うかシンプルなのだ。 全体の構成は写真から分かるようにかなり複雑である。 なのに、実物を見てシンプルだと感じたのはなぜだろうか?。 非常に細かいレベルの装飾が簡素化されているような気もする。

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そういう印象もあって、ある意味でこの教会はいかにもアメリカの建物らしいと思った。 悪く言っているのではない。アメリカが古い何らかの様式にもとづく建物を建てた時、 何か一種のシンプルさの印象をそこに与える事が多くなかっただろうか。 ジェファーソンの建築以来アメリカの様式的建築には簡素なものが多いといわれる。

この事を例えば、空港からマンハッタンに着くバスの中から見たアパートでも感じた。 パリのアパートメントは装飾が多くて何か一種の末期的な様相を帯びているが、 こちらのアパートメントは同じような時代の影響を受けて作られている筈であるにも関わらず、 何かシンプルで、その為に救われている様に感じたのだった。 様式をすっきりとした形で明快に再現する、それがアメリカのやり方なのではないのか?。 この教会から受ける印象はある意味でそれと似ている。 ゴシックを作るにしても、すっきりした印象のものとして作ったと言えるのではないか。

ただ、後日AIAのNYガイドを見たところ、レンウィックが柔軟性のない花崗岩を使用した為と、 フライングバットレスを省略した為に、折角のフレンチゴシックが平凡化されていると評されていた。 アメリカ人であるAIAガイドの著者にとって、この教会のシンプルさは実は気に入っていないようである。






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[参考]
  • "AIA GUIDE TO NEW YORK CITY", Three Rivers Press, 2000


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