アーヴィング・トラスト・ビル
Irving Trust Co. Building (1931)
by ラルフ・T・ウォーカー (Ralph T. Walker)


アールデコ調のビル例。外観の端正なデザインとは対照的に、色彩豊かで華麗な内部空間
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このビルはいかにもマンハッタンの1920-30年代の古きよき時代のビルという感じである。 そういうビルは、大抵アールデコによる控えめな装飾的要素と、 ゾーニング法に基づく多少趣向を凝らしたセットバックを伴っており、やや赤茶けた灰色をしている。 そういう意味では何か似たようなビルがあるな、と思ってしまう。

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しかしこのビルにはここだけの特徴がある。 それは、アールデコに基づく非常に豪華なエントランスホールを持っている事である。 外観にもアールデコ的な窓の切り方とか装飾が見えるのだけれども、 中に一歩入ると信じられないくらい饒舌な金色の内装に出会う。 その内装を是非写真に撮りたかったのだが、 そこはいきなりオフィスになっていて、完全な撮影禁止であった。 仕方ないので、思わせぶりに開いている1Fの窓の外観(写真2)を見て中を想像していただこう。

設計者のウォーカーは ニューヨーク・テレフォン・ビル (1926)のデザインも担当している。 テレフォン・ビルと比べるとアーヴィング・トラスト・ビルは表面がなめらかである。 上部のセットバックの仕方はいまいち写真からは分からないが、 テレフォン・ビルの方が肩がゴツゴツしていたように思う。 AIAのNYガイドによれば、このビルはウォーカーの彫塑のような造形の頂点に立つものだという。 控えめに見えるが、よく見ると凝っている美しいビルである。






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[参考]
  • 「ニューヨーク摩天楼都市の建築を巡る」小林克弘著、丸善
  • "AIA GUIDE TO NEW YORK CITY", Three Rivers Press, 2000


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