ニューヨーク・テレフォン・ビル
New York Telephone Building (1926)
by ラルフ・T・ウォーカー (Ralph T. Walker)


20年代の、ゾーニング法によるセットバックと塔の巧みなデザイン
柱型の垂直性を強調し統一感を与える。アールデコ装飾と全体形の巧みな統一
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良い写真が無い上に、頂部が補修中か何かでシートが被せてあり、 実に見にくいのをお許し頂きたい。 このビルは1926年に建ったが、 当時は1916年施行のゾーニング法に合ったセットバックするビルの意匠を模索していた時代であった。 このビルのセットバックは複雑で、 しかも頂部は間柱(窓と窓の間)が伸び上がりアクセントになる独特の形をしている。 このようなデザイン上の試行が、 多くのビルのマンハッタン的な頂部の風貌を作っていったのであろう。

アールデコ的な装飾があるというが、もっとずっと近づかないと分かりにくい。 いずれにしても、この頂部全体の形が一種のアールデコ的デザインである (マヤにヒントを得ているとも言われる)。

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とにかくこのビルは1920年代のビルデザインの代表的なものの一つと言われている。 そして1920年代というのは資料を見てもあまり有名なビルがない。 1910年代は ウールワースビルエクイタブルビルニューヨーク市庁舎 があって、 1930年代に突然 クライスラービルエンパイア・ステートビル が現れる。 では1920年代はどんなビルだったのか、 というとあまり資料に書いてないのである。

しかし1920年代は、 ゾーニング法に基づいたマンハッタンの特徴的な摩天楼の形が熟成されていった重要な時期である。 シカゴでは1922年にシカゴトリビューン社コンペがあってR・フッドが一等を獲得しているが、 そのフッドが アメリカン・ラジエター・ビル を作ったのが1925年であった。 頂部の形を見比べると興味深い。 あとこのHPの中の建物で言うと、 イライ・ジャック・カーンの パーク・アヴェニュー・ビル の竣工が1927年である。

AIAのNYガイドによると、このビルの下の部分に歩行者アーケードがあって、 ヴォールトが架けられていて有名らしいので、興味ある方は見ると良いだろう。






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[参考]
  • 「ニューヨーク摩天楼都市の建築を巡る」小林克弘著、丸善
  • "AIA GUIDE TO NEW YORK CITY", Three Rivers Press, 2000


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