クライスラービル
Chrysler Building (1928-1930)
by ウィリアム・ヴァン・アレン (William Van Alen (1882-1954))


エンパイア・ステートビルと共に1930の摩天楼の代表。77階建て319m
アールデコの精華。当時の造形感覚をよく伝える。クライアントに関連するユニークな装飾
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このビルはどこから見てもよく出来ている。 オフィスの中まで見たわけではないが、外装と1Fロビーのデザインレベルは他から卓越している。 セットバックする肩の部分に羽の生えたラジエターキャップがあったり、 車体(タイヤ跡?)をかたどった外装パターンがほほえましい。 基部の構成・プロポーションは良いし、様々なレベルで意匠が追及され、 全体のデザイン密度を保っている。

このビルというと必ずアールデコ調の頂部が紹介されるが、 途中階部分のタイリングパターン(窓のふち取り)もなかなか良いと思った。 1Fロビーは当時のアールデコの最も豪華な表現である金色を多用している。 大理石、金色、金属、モザイク、天井画(写真7)、照明等の要素が、 一つのアールデコ作品としてのロビーを形作る。 エレベーターの扉は、これもよく言われるが美しい。

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エンパイア・ステートビル の1Fホールも、大理石を使った豪華なものであるが、 こちらはもっと天井が低く感じられ(あくまで感じられるだけか?)、もっと気がこもっている感じだ。 何か意匠の世界に沈溺してしまいそうな多少のあやうさがつきまとう。 (この沈溺をもっと推し進めたのが アーヴィング・トラスト・ビル のロビーである)。 前に何か写真を見たときには、ロビー正面に特徴的なアナログ時計があったのだが、 今回は見ることが出来なかった。

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マンハッタンに突然躍り出たこのビルは、 摩天楼という「生物種」の中でも特異な個体であった。 「錯乱のニューヨーク」に紹介されている建築家の仮装舞踏会では、 ヴァン・アレンだけがひときわ凝った装束で登場し、他を圧倒している。 それは、はからずもこの建物(建築家)が当時の他の建物(建築家)の中で占めていた位置づけを よく示している。 但し、当時のヴァン・アレンの最大の栄光であった「高さ世界一」は、 すぐさま エンパイア・ステートビル の「恥知らずの」飛行船マストによって追い越されてしまったのだった。






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[参考]
  • 「錯乱のニューヨーク」レム・コールハース著、筑摩書房


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