エンパイアステートビル
Empire State Building (1931)
by シュリーヴ・ラム&ハーモン (Shreve, Lamb and Harmon)


1930代の摩天楼の代表。アールデコ調だが、中はオフィスだけで作りは簡単。左右対称の伝統的造形感覚
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エンパイアステートビルは、かつてのウォールドルフホテルの跡地に建てられた。 その時にウォールドルフは今の ウォールドルフ・アストリア・ホテル の敷地に移ったのだった。 で、この敷地はというと、かつての優雅で社交的活動が行われたウォールドルフとはうって変わって、 ひたすらビジネスの為に敷地を上方拡大するエンパイアステートビルに取って代わられた。

如何に単純に同じフロアの繰り返しであったかというのが、建築記録からも分かる。 建設現場はアセンブリーラインさながらで、遂には十日間に14階半という工事記録を残したという。 日本のいわゆるRCの現代建築は躯体で2week/フロア位だそうだ。 あまりに数字が違う。 これは高層の細い部分において、鉄骨だけどんどん先に組み足していった記録なのかもしれない (でも更に言うと、当時エンパイアステートビルの工事で14人もの人が死んだというから、 今日では考えられない工事の仕方だったのだろう)。 とにかく、このビルは<単純>だと言われる。

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ビルの作りは、南北にシンメトリー構成である。 外装的には、窓と外壁をツライチにして壁の垂直感を損なわないようにしたそうだ。 窓の縦の連なりや赤いさんが、デザイン的なシャレ気を感じさせる。 もしこのビル以外に有名なビルが無ければ、 これは1930年代らしくデザインされた秀逸なビルだと思うに違いない。 しかし、我々は クライスラービル を見てしまっている。 デザイン密度としては、クライスラービルの方が明らかに上をいっている。

エンパイアステートビルは、中味は単純なオフィスで、工事も単純化した。 外装デザインに工夫してはいるものの、 「高さだけが突出した単純ビル」と言われても仕方ない面を持っている。 現にコールハースはそんな書きぶりであった。 でも、竣工以来、ニューヨークの顔として、パリにおけるエッフェル塔みたいに有名になり、親しまれてきた。

このビルで一番有名なのは、1970に ワールドトレードセンター ができるまで高さ世界一だった事である。 しかしここには姑息な高さ競争があった。 「ニューヨーク摩天楼都市の建築を巡る」によれば、 まずウォール街40番地ビルが1929年に高さ282mで ウールワースビル を抜き去る。

次に出たクライスラービルは、設計当初77階建て282mの予定であったが、 ウォール街40番地ビルが60cm高くなってしまったので、 ひそかに頂部に尖塔を仕込んで、 ウォール街40番地ビル竣工後それを押し上げ高さを319mとし、エッフェル塔もしのぐ高さ世界一になった。 エンパイアステートビルは当初の設計では85階建てであったが、 クライスラービルの尖塔があと60cmと迫った為に、 急きょ展望台とその上の尖塔を追加したのであった。

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とまあいうことなのだが、 実際見てた限りでは、クライスラービルは許す(!)。 つまり、あの尖塔のポールは美しさを何もそこなっていないばかりか、 あれなしには考えられないくらいデザイン的に合っている。 それに比べ、エンパイアステートビルの展望台・尖塔部分はいかにも取って付けたようである。 もちろんあっても悪くはないのだが、つぎ足したデザインである事が見てとれる。 ちなみにこの尖塔部分は、飛行船係留マストであると説明されたのであった。

最後に、このビルがいかにエレベーターのお化けであるか、現地で作った1Fの見取り図を載せておく(写真8)。 但し図のプロポーションは全くいいかげんである上に、エレベーターの数が全然足りない(!)のだ。 このビルは2重構造の尖ったピラミッドだと言われる。 エレベータ室のピラミッドの外側に、 オフィスのピラミッドを被せた形だというのだ。さもありなん。 1Fにあった収容オフィス名簿からすると、少なくとも4,000件以上のオフィスが入っている。 日本だったら、恐らく400件も入ってたら「大きいなぁ〜」と思うだろう。桁が違う。

2006年5月に、読者の方がお便りをくださって、基本データを教えて頂いた。
  ●鉄骨の総重量:6万トン
  ●ロビーから102階までの階段数:1,860段
  ●窓の数:6,500
  ●エレベーターの数:73機
「ご存知の通りEmpire State Buildingは2006/5/1で75歳の誕生日を迎えました。 私は毎日このビルの中にある語学学校に通っていますが、何度見ても 素晴らしいビルです。」と書いて下さった。実際に利用してとても気に入って居られる様子が伝わってくる。 上の記述はどちらかというとハスに構えて揶揄するものであるが、 コールハースの「錯乱のニューヨーク」の文章に引っかけて書いているので (そしてコールハースは何でも揶揄してしまうので) お許し頂きたい。






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[参考]
  • 「錯乱のニューヨーク」レム・コールハース著、筑摩書房
  • 「ニューヨーク摩天楼都市の建築を巡る」小林克弘著、丸善


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