ウールワースビル
Woolworth Building (1910-1913)
by キャス・ギルバート (Cass Gilbert (1859-1934))


高層ビルにゴシックをまとわせた。ゴシックの持つ垂直上昇感が高層ビルによく合う
壮麗な「商業のカテドラル」。高層建築に歴史的様式をまとわせた例としてはNY新庁舎と対照的
高さ241m。これは現東京市庁舎とほぼ同じ。1931まで世界最高ビルだった
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このビルはゴシックの様式をまとっていると言うが、 別に尖頭交差リブヴォールトがあるわけではないし、フライングバットレスもない。 バラ窓もない。あるのはまずリブである。 即ち、建物の四隅が太くコラムになっているし、 その間にも太いところがある。これがリブに見立ててあるのだ。 次に中段や頂部でトゲトゲしたものが幾つも立っている。 尖塔を多く持つ事もゴシック的だ。

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あと、1F-2F部分の外部装飾は、 ある種のゴシック様式(フランボワイヤン?)に出てくる文様に似ていて、 ゴシック的と言える。 ビルの入口(写真5)はまさにカテドラルの入口であり、 ビルをカテドラルに見立てたという感じがすごく出ている。 これで守衛が司祭の服を着ていたら完璧である(!)。

「商業のカテドラル」と呼ばれたらしいが、エントランスを入ればその感じはよく分かる。 しかもこのビルには、教会には無い特別の装置が付いている。 そう、上昇の秘跡を行い別の天空へと導く<エレべヱタア>という乗り物である。 従ってこの入口は凝りに凝っている(写真7)。

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とまあ言うわけで一応ゴシックのビルという訳なのだけれども、 実際に外見を見て感じたのはやたら変な装飾があるなぁという感じである。 3階以上の窓と窓を上下につなぐ細かな装飾は、 とくにゴシック的なものとは言えないのではないか(残念ながら写真では見えない)。 それからビルの中段のセットバックした肩の部分にある装飾された小さなファサードのような部分、 あれは一体何なのだ?(写真3)。

そこはゴチャゴチャしていて、決してルネサンス的ではないというのだけは分かるが、 こういう装飾だけに走ったような形態もゴシックと呼ぶのか。 チューダー・シティ の装飾と類似性があるし、 きっとゴシックと呼ぶのだろう(年代的にはチューダーシティがこちらを真似した)。 しかしどうもイメージが違った。 実をいうと、この部分が祠(ほこら)のように見えて、気になって仕方なかったのであった。

全体印象としても、こう言うとナンだが妙なビルとしか言い様がない。 私の場合は、変わったものが好きだから、それはそれで受容れられるけれども、 とにかく『このビルはゴシック調で作られ、その垂直上昇感が高層ビルによく合っている』 という一般的な説明だけではとてもとらえ切れない、不思議な特徴をこのビルは持っている。 いや、ゴシックというものそのものが、 何か中世のおどろおどろしい雰囲気をひきずったものだとするならば、 このビルはその嫡子として正統であるのかも知れない。

それにしても、キャス・ギルバートはこの前に 旧合衆国税関 (US Custom House)を作っていて、 そこで見せたボザール的正統的な古典様式建築とはおよそかけ離れたこのようなビルを、 手のひらを返すように作って見せた事に、驚きを禁じえなかった。 ギルバートは、先輩のマッキムの事務所が ニューヨーク市庁舎 を古典様式で建てつつあるのを横目で睨みながら、 まったくかけ離れた趣向のビルを作って対抗させたのであった。 結果的には、ギルバートの方が勝ちと言える。 というのは、マッキム等のニューヨーク市庁舎のルネサンス的古典様式は、 高層ビルとしてその後省みられず(それ以降作られず)、 ギルバート流の擬ゴシックが高層ビルとしてはやったそうであるから。






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