ワールドトレードセンター World Trade Center (1970-1977) by ミノル・ヤマサキ (Minoru Yamasaki)
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2001年9月11日の同時多発テロ事件によりツインタワーが崩落したとき、 砂のお城のように粉々に崩れてゆく様を見て、何とも哀れを感じました。 一連のテロで命を落とした方々の御冥福をお祈りします。 今やツインタワーはなく以下の記述は「過去のもの」ですが、 このページは、思い出としてとどめたいと思います。
(ワールドトレードセンターの追加写真、リンク集、所有者等の解説)
ワールドトレードセンターの開発は、ロウアーマンハッタンの船舶交通が下火になり、 海岸地帯が船着き場として機能しなくなってきた事と関係あるのだろう。 とにかくこのセンターが1966-1977年にかけて開発され、 続いて1980年代にはすぐ隣に ワールド・ファイナンシャル・センター が開発される。 両方とも複数のビルとプラザ、広大な敷地を持つ複合施設である。
さて、ミノル・ヤマサキによるこのセンターは、 中央にプラザ(広場)があって、それを取り囲んで大小6つのビルが建っている。 地下は広大なショッピング・交通センターである。 一番有名なのが第1ビルと第2ビル、すなわち110階、約410mのツインタワーである。 その他中くらいの銀色のビルと黒い低層が2棟、少し離れて茶色いのが1棟ある。 黒いビルの意匠がいまいちピンと来なかったけれども、 とにかくプラザからの各棟の眺めは良く、 その中にあってツインタワーは特異な存在感を示していた。
プラザに出ると、とにかく無造作に410mのばかでかいものが置いてあって、 そのふもとまで行くと410m上の先を見上げる事が出来る。 ツインタワーの表面は間柱(窓と窓の間)がまっ縦に走っていて、 それがひたすら410m続いている。 小細工はない。圧倒的に高い。 40数年ぶりに エンパイア・ステートビル を抜いて世界一になった(すぐ破られたが)。
ツインタワーは、この付近一帯のビルがそれまで作っていた 「スカイライン」とか「スカイスクレーパー」のイメージを一挙にぶち壊したとも言える。 余りにも高すぎるし、しかも形が単純で、 何というかすごく無造作なものがいきなりすくっと建ち上ったのである。 英語でモノリスという言葉がある。古代からすくっとそれ自身で立っている独立石の事だ。 他との関わりを一切持たずそれ自身で立っている・・そんなイメージがしてこないだろうか。
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GreatBuildingsOnline に引用されていた解説によると、 ミノル・ヤマサキは100個位模型を作って検討したらしい。 それで最終的に2棟方式で中央にプラザという現在の案に収束したそうだ。 プラザに面して各ビルが並ぶのはモダニストらしい構成だ。 ビルの形態がシンプルなのもモダニストらしい。 ツインビルの1F,BFは巨大な吹抜け空間になっていて、 このような大きなビルに相応しい堂々としたたたずまいで人を迎えてくれる。 劇的とも言える。
しかし重いビルの下部によくこれだけの空間を取ったものだ。 しかし耐力的な構造が分かりにくかった。 建物の外側に近いところにホール空間が回っているので、 それ以外の中央部分だけで荷重を支えているとすると、 横力のモーメント(地震は無いとしても風力など)に対する復元力がすごく弱くなる。 だから外壁の間柱も荷重を支えている筈であるが、 間柱は構造部分に見えない。つまりそうは見せていない。 ちょっと構造表現的にあいまいである。
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とにかくツインタワーは高い、大きい、直方体である。 デザインに小細工してないぶん、純粋な垂直上昇感を持っている。 モダニストのビルなんて単純だからどうせつまらなく見えるだろう、 とタカをくくっていたのだが、そんな事はなかった(写真7)。 ブルックリンハイツ遊歩道からロウアーマンハッタン全体を一望のもとに見た時、 このツインタワーはとても端正な美しさをたたえていた。
写真7では手前岸壁にどうしようもなく安直なポストモダニズム建築が並んでいるから、 ツインタワーの美しさがよく分からないかも知れないが、実地に見るとなかなか良かった。 表面の見せ方や、上の部分だけ色を濃くしてあったりして、 全体として遠くから「見がいのある」ビルに仕立て上げられていた (タワーの頂上にあるアンテナ塔(?)だけは気に入らなかったが・・)。
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[参考]
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