モーガンライブラリ
Pierpont Morgan Library (1902-06)
by マッキム・ミード&ホワイト (McKim, Mead, and White)


ルネサンスの庭園パビリオンに見られる単純な箱形の中央にパラディアン・モチーフがくり抜かれたファサード
装飾は抑制されているが石工事は完璧(大理石を目地なしで積む)。細部の洗練
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モーガンに建築を依頼されたマッキムが、その全精力を傾けて作った小品である。 最終案は、イタリアのルネサンス時代の庭園パビリオンに見られる単純な箱形を基本としている。 その中央にパラディオが好んで使ったパターン(パラディアン・モチーフ)に従って、 入口がくり抜かれている。

写真で見ると、石の白い平らな表面ばかり多くて、すこし間延びした印象を持たれるかも知れない。 実際、装飾は抑制されているのだが、少ない装飾は丹念に作られていて非常に効いている。 写真で見るほど単純ではない。 抑制された中に基本的なコンポジション(プロポーション)が美しい。 この建物の工事にあたっては、 大理石を目地なしで(目地が目立たない方法で)積む為に非常に注意が払われたという (大理石を貼っているのではない。積んでいるのだ)。 石工事はほぼ完璧という事だ。 装飾でなく石の表面がそのまま美しさを表わすよう、細心の注意が払われている。

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石の表面の平らな部分が多いという事を沈黙になぞらえるならば、 この作品はまさに沈黙で、 同じマッキム・ミード&ホワイトの作品でも センチュリー・クラブ は饒舌である。 沈黙の美ということで、何か抑制のきいたモダニズム作品を連想してしまった。 まぁとにかく派手な作りでないことは確かだ。

この建物の向かって左には1928年にモーガンの住居跡に息子が作った別館がある(写真4)。 この棟と殆ど同じに見える石で貼ってある上に、 この棟の一層目二層目の仕切りと同じ高さにやはり仕切りを入れて、 この棟と違和感を極力少なくしようとしている。 何というか、本館と2つ並べて視野に入れたとき、決して「図」にならないように、 「地」に見えるように仕組んであるように思った。 何か似たものが左にもあるな、とは思うけれど決して目立たない。 注意深く増築された事がわかる。






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[参考]
  • 「アメリカ様式建築の華」小林克弘著、丸善


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