ニューヨーク証券取引所 New York Stock Exchange (1903) by ジョージ・B・ポスト (George B. Post (1837-1913))
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ニューヨークへ行く前にこのビルをうんと小さい写真で見た。 その時は、何とも馬鹿々々しく見えたものである。 つまり、古代ギリシア・ローマ神殿のようなものが、 こともあろうに普通のビルのどてっ腹から突き出ている。 確かに ブルックリン美術館 だって古代ギリシア(ローマ?)神殿の切れ端が建物から突き出ているし、 そういうやり方は様式的建築の手段としてあるのだけれど、 それは全体を総合的に意匠としてまとめている場合の話だ。 ニューヨーク証券取引所のように普通のビルに取ってつけたようなそのやり方は、 いかにもハリボテ的に思えた。
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しかし現地で見ると、ハリボテもここまで熱心にやると、感心するくらい立派だし重厚であった。 一つには大きな石造の持つ質感のせいであり、もう一つには装飾の見事さにある。 そして何より写真では絶対伝わらないものとして、スケール感があるのだ。 こんなハリボテ方式を考えたポストという人がどんな人か知らないけれど、結果的には成功したと思う。
ただ、ギリシアオーダーのある壁面は採光できていないから、内部がどうなっているのか気にはなる。 多分、TVでよく見るあの証券取引所の大部屋があったりするのだろう。 見に行ったのは三時半位で、取引が終わったせいか、人がやたらこの中から出てきていた。
AIAのNYガイドでは、この建物をニューヨークに数少ない偉大な建築的空間と書いてあった。 確かに装飾は美しいし、正面に立つと質感や立派さが伝わってくる。 設計者のポストは過去にクイーンアン様式などを作ったこともあったが、 シカゴ・コロンビア博(1893)の後で古典様式が大はやりして、 このような古代ローマ神殿のファサードを作ったそうだ。
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ここで比較として、写真3にパリ証券取引所を挙げる。 パリ証券取引所は四方に円柱を配して、建物全体を神殿風に作った恰好になっているけれども、 これと言った決め手となるファサードはない。 ニューヨーク証券取引所は、ローマ神殿の正面のごく一部分だけだけれども、 そこだけ非常に密度を高く作っている。
ウォール街というのは、行ってみれば分かるが何ともこじんまりした小さな道路である。 そこに面して金融関係のオフィスが所狭しと肩を寄せ合っている。 世界金融の中心地と言っても、そこはマンハッタンの開闢当初から使われている場所だから、 昔のスケールがそのまま残っていて小さいのである。
この界隈に建てるつもりである限りは、大きな証券取引所を建てる余裕なんて無かった。 小さい敷地と狭い道路に面して、どれだけ歴史様式的な威厳を建物に持たせるか、 どれだけ特色のあるビルにする事ができるか、 検討した末の方法だったに違いない。
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