ヴィラード邸
Villard House (1882-85)
by マッキム・ミード&ホワイト (McKim, Mead, and White)


当時の瀟洒で軽快なスタイルの住宅の中に挿入された、重厚な石と古典様式の表現
取り壊しの話が出たが保存運動が起き、現在はホテルの一部として使われている
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ヴィラード邸が出来た当初、ミッドタウン5番街辺りは高級住宅街として発展しつつあった。 1881にはリチャード・モリス・ハントによるヴァンダービルド邸ができたが、 これはフランスの瀟洒な城館のイメージを模したものだった (リチャード・モリス・ハントは メトロポリタン美術館 正面もやっている人で、 この人のスタイルがフランス城館風だったという訳では決してない)。

しかし当時のシティービューティフル運動の高まりの中で、 NYという都市を飾るには、 ヴァンダービルド邸のような優美な城館風ではなく 厳格な古典様式スタイルがいいと考えられ始めていて、 マッキム・ミード&ホワイトが、それに対する一つの回答として設計したのがこの 重厚なルネサンスのヴィラのスタイルのヴィラード邸だったという。

確かに無骨でそっけない感じすら与える。 作りとしては三層構成の一層目(1F)と二層目(2,3F)が石の積み方ではっきり区別されている。 主階(2F)だけ窓の形を四角く変えている。 装飾でゴテゴテしているようには見えないのだが、 しかしよく見ると、両翼の正面主階の中央窓がそこだけ装飾密度が高くしてあって、 アクセントとなっている。 出隅の石が強調されていて、 それが全体の雰囲気を締めている。

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いまこの館はホテルの一部として利用されている。 中に入るといかにもインテリアっぽい列柱が並んでいて、 もとのヴィラード邸をしのぶ面影は全くなかった。 同じ歴史様式を参照していても、ホテルが飾り立てると 何でこうも違うんだろうと思った。

しかしまあ、そもそも何でこんなに赤っぽい石(ブラウン・ストーン)を使ったんだろう?、 と最初疑問に思った。 渋い家を作るなら白(グレー)でいいではないか。 しかし、AIAのNYガイドによれば、かつてこの地域には6棟のブラウン・ストーンの、 まるで一棟に見えるような立派なルネサンス風パラッツォがあって、 ヴィラード邸はその名残だそうである。 ヴィラード邸はその保存と引換えに、背後に無味乾燥なパレスホテルを迎えることとなったと、 AIAガイドは苦々しく結んでいる。






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[参考]
  • 「アメリカ様式建築の華」小林克弘著、丸善
  • "AIA GUIDE TO NEW YORK CITY", Three Rivers Press, 2000


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