NYに着いて感じたこと(NYという都市について)
ニューヨークに着いたら3月の末なのに雪でした。 防寒具なんて持ってきてないしどうしようか?、と心細い反面、 面白くなりそうな予感がゾクゾクとしてきました。
さて、我々の日航機が着いたJFK空港のターミナル1は、 パイプで組んでH鋼で架構してて、構成としてはシンプルなものでしたが、 成田の何か暗い感じのターミナルビルより開放的で気に入りました。 JFK空港は、各々のターミナルが独立していて形が違います。 建築家も違うし建った年代も違うようです。 一つ一つが独立機能で中央というものがなく、その点成田や関空と全然違います。 国際旅客の受容れ/送出などは一ヶ所にまとめたほうが効率的だと思うのですが、 どうしてこうなったんでしょう?。
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さて、我々は TWAターミナル を見た後マンハッタン行きバスにのりました。 その途中の車窓は、ニューヨーク郊外というものの一つの姿を見せてくれたように思います。 同じ形の規格品住宅がずらっと並ぶ住宅団地がやたらあるのです。 戦後の米国では、W・レヴィットというデベロッパーによって、 大規模な規格品住宅による住宅団地が作られ、レヴィットタウンと呼ばれました。 それよりは複雑に出来ているんですけど、でも何かレヴィットタウンを連想させます。
レヴィットタウンはどの住宅も殆ど同じ形をしていて、 同じ形だから没個性的で嫌だという批判もあるにはありましたが、 何といっても価格革命であり、誰しもがその安い家に住めるという事で、 庶民層によく売れたそうです。 それはあたかも、誰しもが<アメリカの市民>なのだ、 という平等の自覚を象徴しているかの如くだったと言われています。 それからもう50年以上経ちました。 最近になっても「平等を謳う」規格品住宅が作られ続けているという、郊外の現実を見たように思います。
やがてバスはイーストリバーの下を通ってマンハッタンに出ました。 そこで私が気になったのは、 エンパイア・ステートビル を通過する直前に見た街路のアパート群でした (注意:以下の写真はこの時のものではありません)。 古い型なので古めかしい装飾がなされているのですが、その装飾がパリで見たアパートのものより すっきりしていて、何か救われているような感じがしたのでした。 パリのアパートは大抵装飾過多です。 装飾が何というか末期的様相を呈していて、見続けているとイヤになってくるようなくどさがあります。
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アメリカで、ヨーロッパ流の様式建築(古典建築)をしっかり作った最初の有名人物は、 確かトーマス・ジェファーソンでしたね。 彼の作風はシンプルだったと聞いたことがあります(間違っていたらご免なさい)。 つまりアメリカでの様式建築は、発端から骨太で装飾を簡素化する傾向にあったのではないでしょうか。
ニューヨークのボザール様式建築は、コルビュジェでさえ「ヨーロッパのものより良い」と評したと言われますが、 それは、様式の本質をうまく表わした上で、率直なシンプルさを持っていたからではないでしょうか。 何か共通してシンプルな装飾という伝統があるような、そんな事をふと思わせる、アパートの面々でした。
さて、バスはポートオーソリティという最終目的地に近づきました。 この辺りはニューヨークでも安っぽい下町に属し、雑多で猥雑な感じすら受けます。 裏通りにしょーもない駐車場ビルがあったりして、景観もへったくれもありません。 でも最初にそう言うのを見せられて逆に安心した気がしました。 何もかも整っていたら、ニューヨークを、我々日本の都市と全然違った崇高な都市として別格扱い しなければならなくなります。そんな事はない、ここもこうなんだ、と安心させられました。
マンハッタンは雑多です。ビルも造られた年代によってスタイルが全然違い、 それらが混然と同居しています。 何かこう、景観を考えて計画された都市というのではなく、 その時その時の必要性とスタイルのはやりに左右されつつ、継ぎ足し継ぎ足し作られた街という感じです。 ホテルの窓から見ていても、変てこなビルがあったり、全然面白みのなさそうなビルもあるし、 意図的に作った景観全体のつながりというものはありません (それでいて、地区ごとの性格が景観に出ていますが)。
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但し、そんな中に建築財産は沢山あります。 到着した日にマディソンスクエアからユニオンスクエアまでブロードウェイを南下したのですが、 そこかしこに古い建物が残っており、それぞれが設計当時の建築の「はやり」をよく表わしているように 思えました。いちいち挙げたらきりがない程あり、実際我々には名前も知られていないビルばかりです。 しかし一つ一つにデザインの来歴などがありそうで面白そうでした。
但し多すぎてやってらんないって感じです。 もし日本で古い時代のビルが残っていたら、希少価値が出て大切にしてもらえそうです。 マンハッタンにはそんなビルが数えきれないほど残っているのです。 羨ましい事です。
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