ワンUNプラザ One United Nations Plaza (1976) by ケヴィン・ローチ&ジョン・ディンケルー (Kevin Roche & John Dinkeloo)
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このビルが出来た当時というのは、モダニズム的なそれまでの建物の作り方が疑われ始め、 色々な意味で新しい試みが行われ始めたところだった。 もっと全然違うオブジェに見えても良いではないか、 このビルは正にそういう主張の発露である。 このビルができた1976年頃というと、1977にポンピドゥー・センターができている。 C・ジェンクスの「ポストモダニズムの建築言語」もやはり1977発刊である。 シティコープセンター が1978に出来ている。 しかし AT&Tビル は1984だから未だ影も形もない。
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このビルの主張は畢竟、パッと見た時の印象に尽きるのではないか。 反射性の強いガラスに覆われて、空の雲をそのまま映す反射体と化したカーテンウォール。 ぬめぬめと体をくねらせ、箱形である事を金輪際やめてしまおうとする躯体。 建物全体が巨大なオブジェと化している。 段状のセットバックの代わりに建物は斜めの面を切って変幻に形を変える。
GreatBuildingsOnline に引用されていた解説には「この形態はゾーニング制限と内部機能を反映している」 と書いてあったが、1961年にゾーニング法は撤廃され容積規制に移っているから、 このビルのセットバック(スロープバック)は純粋に形態の為のものだと思う。 機能が反映云々を含め、要するにこの引用句は 「このビルは形だけじゃなくて機能その他の制約も立派にクリアしていますよ」と言いたかったのだろう。
ちなみにGreatBuildingsOnlineではここを単に"U. N. Plaza"といって紹介していたが、 ワンUNプラザと言わないと別のビルの事になってしまうので注意が必要だ。 正確にはワン(1)UNプラザとツー(2)UNプラザの2棟で、 このなまめかしい形態が構成されている。
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上に述べたように、形態の面白さを追及したという事なのだが、 実際見に行って気になったこともあった。 遠くから見てもビルに隠れて部分的にしか見えないし、 近くに寄れば今度は見え方が全然違ってしまって、 このビルの形態が本来持っている面白さがなかなか体感できないのである。 このビルを作る時はさぞかし模型で検討を重ねた事だろうが、 模型を鳥瞰的に見て面白いということと、 うんと近くから人が見上げて面白い形に見えるかどうかは別である。
国連ビルのビジターセンターの敷地に入った所でようやく全体が見えて、ビルの自在な形が観賞できた。 もうちょっと歩行者からの視点を考えて欲しかった。 まあ、それでも他のビルの上階から見れば、色々よく見える場所があるのかもしれない。
あとこのビルは、下半分がオフィスで上がホテルという複合機能の試みも行っているそうだ。 エントランスを入ると細い通路がエレベーターまで延びている。 いきなり変なオフィスカウンターがあったりして、通路も細いしホールというものが無い。 どこか別の入口を見損なった可能性もあるが、 とにかく、立派な車止めのスペースを横切って内部に入った途端に狭苦しくなるこのような構成を、 もし建築の学生が設計演習の際にやったとすれば、さぞかし教官に怒られる事だろう。 全体の意図が見えていないので批判は出来ないが、変わった作りではある。
ところがである。 AIAのNYガイドを後日見ると、写真4、5に見えるエプロンのような庇に触れた直後に、 The public spaces within are some of the best in New York's modern architecture. とあるのだ。これは、庇の下の外部空間のことを言っているのではなく、建物の内部の事だと思う。 だとしたらホテルのロビーの事だろうか。ロビーは見ていないので分からない。 誰か探検して来てください。
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[参考]
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