実物を見る前にうんと小さな写真で見ていたのだが、 その時には正面の大きな連続柱がなにか間が抜けて感じられていた。 しかし実物は全くそうではなかった。 柱と柱の間のアーチが非常に効果的であり、また全体の装飾密度が非常に濃かった。 そのために密実な感じが出ていて、間が抜けているという事は全くないし、 空間体験として素晴らしいものがあった。 この建物では、中央の柱と三連アーチを幅広く作って、 大きなスケール感を街に対して見せたかったのだ。
正面の五番街からファサードまでかなり引いて広場スペースを大きく取った上で、 巨大で骨太な構成のファサードを見せる。 その事により、建物自体を豪華・豪放に見せるだけでなく、 街に対しても開放感というか、ゆったりした感じを与える事ができる。 これがもし、こせこせした小細工を弄したようなファサードだったら、 正面の空間がどんなに死んでいた事だろうか。 中央の三連アーチは、そういった演出効果をかなり計算されて作られたものだ。
1 拡大
2 拡大
3
4 拡大
設計者のカレールとヘイスティングスは、 マッキム・ミード&ホワイトが第一世代のボザール流建築家とすると、 第二世代と呼ばれる人達である。 ニューヨーク公立図書館が1911竣工であるのに対し、 他の第二世代と呼ばれる人達の作品は、 ワレン&ウェットモアの グランド・セントラル駅 (1913)、 キャス・ギルバートの 旧合衆国税関 (1907)、 などで大体同じ頃に出揃っている事が分かる。 マッキム・ミード&ホワイトがNYに最も多くの作品数を残したのが1890-1906頃であるから、 ちょうどそれを継ぐ第二世代が育ったことになる。
ちなみにニューヨーク公立図書館は、 もともとマンハッタンの街の外れ(市街地の北の果て)に位置していた大貯水池の跡地に建設されたものである。 1900年頃この辺りまで新たな市街地として開発されてきて、 もう街のはずれではなくなったという事だろう。 それに伴い貯水池は廃止され、本図書館やこの近くにあるグランド・セントラル駅が計画された。
AIAのNYガイドを見ると、1980年代の修復を終えて壁の上のポスターやペンキが剥された公共空間 (図書館の正面の事か)は、 影のない「去年マリエンバードで」のシュールレアリズムを生みだしていると書いてあった。 う〜ん、よく分からない・・。 でもあの映画、来る日も来る日も男が女を非現実的な口説き方をする、 その舞台として様式的建築が確かに不思議な時間の後退感のようなものを感じさせていた。 ここはそんなにシュールな場所だったのか?!。
それから、AIAのガイドには、 この図書館の Main Reading Room が1998年に修復・刷新されて、 すごく良くなったと書いてあるから、興味ある方は是非内部もご覧頂きたい。
より広域を表示する
[参考]
■ 2001-2006 Copyright. All rights reserved |
トップページを表示 |