シーグラムビル Seagram Building (1954-1958) by フィリップ・ジョンソン、ミース・ファン・デル・ローエ (Philip Jonson, Ludwig Mies van der Rohe)
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シーグラムビルの一つのポイントは、 正面プラザ(広場)に立った時のビルとプラザの見え方だと思う。 ビル全体はミースの建物らしく基壇に乗っている(プラザ自身が道路より高くなっている)。 プラザ(基壇)にはバルセロナパビリオンのように池があるが、 噴水で常に波立っているので、ものは映らない。 ビルの1Fは2層分あるピロティとホールである。ビル全体がピロティで浮いている。
行ってみると、プラザはとにかく広い。そして何もない(池しかない)。 コルビュジェにとって広場は人が憩うためのものだったが、 ミースにとっては純粋に「平面」つまり面要素であるように感じられる (芦原義信に言わせると、ここは夜シーグラムビルの夜景を見上げる為の場所である)。 そして正面のビルは、その横幅をほぼ厳密に30等分されてH型鋼による間柱が、 頂上まで立ち上っている。 縦の線と交差して、ガラス面と壁部分による横の線(区分)が交互に繰返す。リズムの一定さ。
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シーグラムビルでモダニズムのビルは一種の「完成」を見てしまったと言われる。 柱型の均等な並び、プロポーション、ピロティ、プラザとの関係、抽象的な箱、等々。 全てがモダニズムの行く先に合致し、ミース的なプロポーションの美学の中で一定の完成を見てしまい、 次にどんなモダニズムのビルが来てもかなわないような境地に立ってしまった。 あとは変奏曲を奏でるしかない。 このHPで紹介している メットライフビル (1963)、 CBSビル (1965)などは、モダニズムの一種の変奏曲と受け取ることも出来る。
ちなみに正面からは単純なこのビルも、後ろや側面には変化がある。 その辺りを写真5〜7に示す。
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ミースのモダニズムは、面と面の関係で構成される一種の構成主義である。 実際の建物においては柱・梁などの構造材と、壁・天井・ガラス面等の関係を明確にしなければならず、 ディテール上の工夫が重要となる。 例えば部材・構成要素の重量感をどうやって失くすか・浮かせるかという事がよく言われる。
シーグラムビルに関してはこんな事がある。 本来ミースは柱をガラス面から後退して置くことを1920年代から主張していた(図に示していた)のに、 シーグラムビルではガラス面のすぐ後ろに柱が来ている。 壁(カーテンウォール)が柱から自由でない。 なぜか?。一種の不可解さや神秘性を与えたディテールの例である。
あと、プラザについて補足的に述べよう。 当時はゾーニング法の時代で、こんなに広いプラザを取る事は低層部のビル容積を削る事でしかなかった。 勿論、それでもモダニズムのビルを作りたかったから作ったわけだけれども、 街の景観という面からすると、 この計画はプラザという公共外部空間の有効性を示すための一大デモンストレーションであった。 ニューヨーク市当局はプラザがもたらす視覚的開放感に大変注目した。 あと チェースマンハッタン銀行 (1961)もプラザを大々的に作った。 このようなプラザの街への寄与もあって、 1961年にNYではゾーニング法が撤廃され、容積規制に移ったのであった。
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[参考]
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