CBSビル CBS Building (1965) by エーロ・サーリネン (Eero Saarinen)
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CBSビルは、三角形断面の柱型を150m立ち上げた特徴的な外観をしている。 まっ縦に、どこまでも終わりなく頂上まで続いている。 この間柱は、一部が構造材で、あと配管スペースにもなっているらしい。 この柱で床を支えているのだ。
ビルを見た印象としては、黒い表面がざらざらしていて、 触感というか、触れるような表面の肌触りがまず感じられた。 その触覚めいた雰囲気は、どこかで同じサーリネンの TWAターミナル とも共通するような気がした。 両方の建物とも、大きいくせして、この触感的感覚のおかげで、 何だか「かわいい」とでも言うような親近感がしてくるのだ。
このビルが建った1965年と言えば、モダニズムが盛んだった時代だ。 1952年に レヴァーハウス 、1958年に シーグラムビル 、1961年に チェースマンハッタン銀行 、1963に メットライフビル (パンナムビル)が建つ。 シーグラムビルがあまりに完成度が高かったために、 それ以後、ミースと同じ土俵でモダニズム美学の勝負をする事はほぼ不可能になった。 そこでモダニストとしては、固有の状況に合わせて 何かヴァリエーションを追加するような方向に向かったと言える。そこで、 メットライフビル (パンナムビル)は8角形平面を採用した。 CBSビルは三角形断面の柱型を立ち上げて、垂直性を強調しているが、これも モダニズムの変奏曲の一つといえば言えるかもしれない。
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しかしサーリネンは純粋なモダニストではなかった。 彼はミースやコルビュジェ等のモダニストが、近代建築のあり方の枠組みを作った事は高く評価するが、 現実に(当時流布していた)モダニストの教説通り作ることには反対だった。 そんな事をすれば、何もかも同じになってしまってちっとも面白くないと語っている。 構造上のアイデアなど追及するテーマが沢山あって、建築はもっと豊かなものだと彼は考えていた。
このビルから受けた印象の中にも、純粋モダニズムと違う面が顕れているように思う。 それは、最初に書いた触感とか肌触りの感覚である。 そのような質感がまずアピールしてくる建物というのは、 厳格なモダニズムにとっては一種の禁じ手ではなかったか。 一時期のコルビュジェが住宅において壁などの質感を打ち消そうとしたのはよく知られている。 ミースもビルに関しては、抽象的ガラスと抽象的鉄の組みあわせによる抽象化されたイメージを求めたと言える。 しかるにこのビルからは、生々しい触感的な質感が伝わってくるのであった。
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