デイリーニュース社ビル(ニュースビル)
Daily News Building (1930)
by レイモンド・フッド+ジョン・ミード・ハウエルズ
  (Raymond Hood + John Mead Howells)


モダニズムを意識し、自然採光を考慮した機能主義的かつ洗練されたセットバック
ロビーに150フィートの丸い空間。床の中央に光の泉。その上に直径10フィートの地球が回転
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ハウエルズとフッドは、1922のシカゴトリビューン社コンペで優勝したコンビである。 ハウエルズがコンペ参加資格を持ち、中味を作ったのはフッドだったと言われる。 このビルも共作になっているが、フッドを中心に作ったのだろう。 このビル、敷地中央に平たく細長いビルを建てることで、 普通なら窓なしになるタワーのファサードに窓を開けてスペース価値を高めたと言われる (「錯乱のニューヨーク」より)。

そのビルの形態だが、表通りである42番街からだけ見たのでは、セットバックがよく観察できない。 後で石原正の鳥瞰図「ニューヨーク2000」を見て分かったのだが、 東西に分かれているこのビルの西部分は高層のタワーで、上の方までずっと延びていて、 上の方で少しセットバックしているだけである。 東部分は東西に平べったく、表側(北側)もセットバックしているものの、主に南側に大きなセットバックがある。 つまり裏でセットバックしている。

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当時フッドは自然採光を考慮した機能主義的セットバックを行ったと言われている。 自然採光を考慮した=窓が多く取れるセットバックとは、 要するに建物をどんどん平べったくしてゆくようなセットバック方法の事らしい。 マグロウヒルビル を見るとよく分かる (フッドのビルのセットバックなら、 マグロウヒルビル が一番分かりやすい)。

フッドは施主に対して常に、自分の作る建物の合理性を主張してきた。 機能主義的というが、要はそういう合理性による説明がなされたという事のようだ。 フッドの本心は、いわく言い難い美学としてのマンハッタニズムを表現することである (と「錯乱のニューヨーク」の著者は言っている)。

フッドのビルはどれも外装が特徴的である。 このビルの布地(カンバス地)を貼ったような縦のライン、 マグロウヒルビル の青のテラコッタ、 アメリカン・ラジエター・ビル の黒など。 この時代のマンハッタンのビルには、抽象的ガラスと抽象的鉄を組みあわせて抽象的ビルを作るという モダニズムの発想はない。 わずかに1938に出来た ニューヨーク近代美術館 の大窓が抽象的と言える位だ。 あとマグロウヒルビルが若干、その流れに乗っている。

「ニューヨーク摩天楼都市の建築を巡る」で指摘されていたように、 モダンさはあるけれども抽象的でなく、適度に「具体性」のあるこのビルは、 おなじみスーパーマンのクラークケントの通っていたビルとして有名だ。 スーパーマンが シーグラムビル から出るところなんて想像できない。

あと、このビルで特徴的な事は、ロビーの中央に光の泉があり、 その上に直径10フィートの地球が回転している事だ。 今でこそ明かりが煌々とついているが、 フッドの構想ではこの部屋の光源は、中央下の光の泉だけであった。 マンハッタン摩天楼のイメージ的な生みの親とも言える、レンダラーのヒューフェリスは、 この闇の中に球形が浮かぶ様を大変気に入り、彼の著作の中で紹介している。 この闇こそは、原初のマンハッタン摩天楼が立ち現れるフェリスの木炭画にひそむ、 根源的な<闇>と同じものなのであった。






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[参考]
  • 「ニューヨーク摩天楼都市の建築を巡る」小林克弘著、丸善
  • 「錯乱のニューヨーク」レム・コールハース著、筑摩書房


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