ユニバーシティ・クラブ
University Club (1900)
by マッキム・ミード&ホワイト (McKim, Mead, and White)


デザインはシンプルなのに饒舌な感じがするクラブハウス。6層ぶんあるのに3層で表現
フィレンツェ風のパラッツォ
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ユニバーシティクラブは、正直言って石の目地が気にくわなかった。 メトロポリタンクラブ などと比べ、ごちゃごちゃした印象を持ってしまった。 入口の柱の装飾もゴテゴテしていて好みでない。 そう言えば センチュリー・クラブ でも似たような事を書いた。

同じマッキム・ミード&ホワイトのニューヨーク市内の小品でも、 このユニバーシティ・クラブと センチュリー・クラブ は、他の メトロポリタンクラブモーガンライブラリヴィラード邸 などと比べ印象上の違いがある。 後者には、抑制された厳格なルネッサンス様式の美を感じる。 余白の美というか、すっきりした意匠である。個人的にはこの方が好きである。 それに対し、ユニバーシティ・クラブと センチュリー・クラブ は、石の表面が装飾的で饒舌である。 それが災いしてどうしても格調が落ちた感じに思えてしまう。

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ただ、 センチュリー・クラブ は、写真・図面で見るとなかなか良い。美しく整い、幻想的ですらある。 そして同じ事が、ユニバーシティクラブにも言える。 写真で見ると、石の表面の仕上げが独特の「ハイカラ」な風合いを醸し出している (私はしゃれたYシャツのデザインを連想してしまった)。 石に穿たれた窓穴のさんも、見た目の効果を充分計算されている。

そして写真で見ると、入口の柱とその回りの装飾部分の意匠は、 センチュリー・クラブ の場合と同様、どこそこの何様式を参照・・というのを越えて幻想的な域に達していないだろうか。 だからこの2つの建物は、ある見方をした時には(写真や図面で見たら)すごくいい、と言える。 何日も見ていたら、実物の方も段々良くなって来るのかもしれない。

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マッキム・ミード&ホワイト事務所では初期の頃を除いて、 作品ごとに担当が分かれて共同制作が少ないと言われている。 しかし、これらのクラブ建築ではマッキムがラフスケッチ(平面・立面)を書き、 その後はホワイトおよび他の担当者に任されたらしい。 センチュリークラブの場合も、平面と全体構成をマッキムが担当し、 立面をホワイトがより洗練させたと言われる。

だとしたらユニバーシティ・クラブもきっとそうなのだろう。 特に入口の柱は、絶対マッキムの趣味ではあり得ないと思う。 幻想的だとか写真で見たほうがいいと感じるのは、 恐らくは、おしなべてホワイトが意匠を担当した部分ではなかろうか。

そう思っていたところがである、後日AIAのNYガイドを見たら、 この建物の担当のクレジットが「マッキム」になっているではないか。 う〜ん・・・。実際見て来た私の感触だけから言うと、 きっとマッキム以外の誰かがかんでいる気がする。 まあでも、彼らはみな、施主の好みや外的環境などに合わせて如何ようにでも デザイン趣味を変えてみせるエキスパートだったのかも知れない。 そうそう作風で割り切れるものではないのかもしれない (納得できてないけど・・)。

ユニバーシティクラブは3層に見せながら実際は6層である。 だからセンチュリークラブ、メトロポリタンクラブのように囲りの建物と比べて、 階高が特に大きいという事はない。 MOMA の近くの五番街の角地にあって、この建物は都会的な文脈に充分なじんでいるように感じられた。 中を撮影したいというと、ここはプライベートなクラブだから・・と丁寧に断られた。






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[参考]
  • 「アメリカ様式建築の華」小林克弘著、丸善
  • "AIA GUIDE TO NEW YORK CITY", Three Rivers Press, 2000


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